1 ベッドで本を読むための5つの体位
  [初出] 2003.05.10  [最終更新]  [平均面白度] 4.55  [投票数] 11  [コメント数] 2
だれかが小林秀雄に本を貸したところ、帰ってきた本のページの間にフケが挟まっているのを見て、「エライ。小林はちゃんと座って本を読んでいる」と誉めたというエピソードがある。

寝転がって読めば、たとえフケが落ちても、ページに挟まることはない。きちんと座って本に正対して読んでいるからこそ、落下したものがそこに挟まってしまう。そうした推察から貸主は小林秀雄の読書姿勢を褒めたわけだ。

何が言いたいか。

このエピソードは本を寝ころんで読んでいる人が多い、ということを暗に示しているんではないか。読書は寝ころんで、というのがごくごく一般的なやり方であるのだろう。もちろんぼく自身もそう。小学生以来延々とこのやり方で楽しんできた。

しかし、寝ころんで本を読むというのは、実のところ非常に不自然な体勢を維持しなければならないので非常に疲れることである。世間の人々はどうなさっておいでか。とっても気になる。

寝ころんで本を読むと一概に言ってもいろんな体位がある。

(1)ラッコ式
仰向けに寝て、本を胸の上に立てる。胸と本はほぼ直角を形成する。頭の下には枕をあてがうか、ベッドの頭部の板(何と呼ぶのだろうか)にずり上がって、強く顎を引く。

ラッコ式の欠点は、ハードカバーの本であると、胸が痛くなるということだ。それに首も凝る。また豊胸の人の場合は、本の設置面がおおきく隆起し曲面になるので、この方法は採れないものと推察される。もっとも、豊胸の人は本など読まない、という説もある(堀岡画伯)。

(2)ビート板式
うつむけに寝る。胸、もしくは顎の下に枕をあてがい、首を後ろにそらせるようにする。腕は前に突きだす。いわばバタ足しているような恰好になる。本は、あたかも水泳時のビート板の位置になる。

ビート板式の欠点はこれまた肩が凝るということだ。それにベッドの全長に対し、本+明視距離+自分の身長が収まりきるのか、という問題も生じる。トールサイズのベッドを使っている人はよいが、そうじゃない場合は足が空中に突き出てしまうだろう。

(3)セイウチ式
繁殖地で周囲を睥睨する雄セイウチのように、肘をつかって、上体をそらし、そうしてできる空間に本をセットして読むという姿勢。

これはずいぶん体力がいる。若いうちはまだしも、老眼になってくると明視距離が長くなるので、その分、上体を大きくそらす必要が出てくる。

(4)ベンチプレス式
仰向けに寝て、まるでベンチプレスのように、本を持ち上げて読むという方式。

これまた体力が必要になる。文庫本の場合はもっとも一般的と言えようが、ハードカバーの大冊になると、日常の厳しい鍛練なくしては実現しえない体位である。また、読書中に不覚にも入眠してしまった場合、本が顔面に激しく落下する事故を招きかねない。生命の危険すらある。また、本のページ面は、完全に下方を向くので、照明をあてにくいという欠点もある。

(5)横寝式
ベンチプレス式から、90度横に寝た姿勢になるとこの体位になる。

この方式の欠点はいくつもある。まず、ビート板式やラッコ式では、本は地の部分で自立するが、この方式では小口(前小口)の部分が接地面になる。小口を接地させ、鉛直方向に重力がかかると、当然のことながら、本は閉じようとする。これは本の仕様である。したがって、横寝式で読書するということは、自然と閉じようとする本を、開いた状態で維持し続けるという闘いに他ならない。

また、目のついている位置と本の大きさとの関係から、左耳を下にして横臥した場合、左ページはよいが、右ページまでの距離が遠くなりすぎるという問題もある。照明もあてにくい。

また枕がメガネのツルを圧迫するという問題点もある。長時間読書をしていると枕からメガネにかかる力が鼻根部をはげしく圧迫し、痛みを生じることが多い。もちろんメガネの変形の原因にもなる。

そしてこれはぼくだけの特殊事情だが、この体位を取って読書していると、ぼくの鼻先と本との間に、必ず猫が割り込んでくる。

いずれにしても、寝ころんで本を読むのは、なかなかのハードワークだ。人々は、どのようにこの苦行を実践されているのか。

ぼくは気になる。(これは2001年8月8日に書いた記事を再録したものです)

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いただいたコメント

ichiro さんによるコメント
http://www.resound.co.jp/

世の中いろいろと考える方がいるものですねえ。

私はメガネをはずして、ゴロゴロ向きを変えながら読みます。[2004.07.29  #91]

みみ さんによるコメント
私もベッドで本を読むのが何よりの楽しみなので、この記事はおもしろかったです。私も長時間楽しむためにだいたい横向きです。右耳を下というのが好きみたいです。猫!間に来ますよね![2004.11.18  #130]

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