4 テンパる
  [初出] 03.01.16  [最終更新]  [平均面白度] 3.95  [投票数] 19  [コメント数] 1
10年ほど前からだと思うのだが、たとえば締め切り直前になったりなんかして、仕事が大忙しになって、他のことを考えたり、行ったりする余裕のない状態を称して「テンパル」という人が増えてきた。

「おや、高木さんの顔が見えませんね」「ええ彼は入稿日でテンパってるんです」

なんて具合。使うのは編集出版関係だけかもしれないし、比較的若いひとたちだけのような気もする。

これは言うまでもなく麻雀出自の言葉だ。麻雀は要するに「あらかじめ定められた型」を構築するゲームである。ばらばらに配られた牌を捨てたり残しておいたりを繰り返し、「型」を構築していく。ちゃんと「型」ができたら上がりだ。

あと1枚の牌が来れば上がりという状態を「聴牌」(テンパイ)という。

ぼくは麻雀を愛好しているわけじゃないけど、それでも昔は頻繁にやった。最近の若者の多くは麻雀をやらないようだ。くだんの表現を使っている人に聞いても、たいていはそれが麻雀用語であることを知らないで使っているらしい。

この用語のこの使い方は、不愉快とまでは言わないまでも、違和感を感じる。

状況にもよるが、テンパイの状態というのは、心理的には余裕があるものだ。テンパイにもっていくまでが忙しかったりイライラしたりするんだけど、テンパイに至れば、もはや「人事を尽くして天命を待つ」という心境で、こころ静かに目的の牌に巡り合うのをただひたすら待つだけである。

思うに、この言葉のこの用法は、麻雀が一般的な「教養」でなくなったからこそ使われはじめたんではないだろうか。みんなが麻雀を知っていたら、「ひいい、テンパってんですよぉ」なんて泣き言は、「よかったじゃねえか」とイナされてしまうだけだ。テンパっているから忙しいなんてこと言えば、日頃の無策を吐露していると受け取られる。キミはテンパってはじめて考えるのか、と。病院のベッドで医療保険のパンフレットを検討しているのと同じようにみなされてしまう。
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いただいたコメント

通りすがり さんによるコメント
「テンパル」って、あと一手来ればあがりが転じてあと一手来ればお手上げ

つまり、ギリギリいっぱいのところ、と言う意味だと聞いた事があります

又聞きなんで根拠となるものは一切無いですが

そういう説もあるみたいというお節介なコメントでした[2004.03.31  #19]
なるほど。テンパってるんじゃなく、テンパられてるわけですね。(いしだ)


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