19 経済効果のナゾ
  [初出] 2003.06.16  [最終更新]  [平均面白度] 4.67  [投票数] 6  [コメント数] 1
なんども書いているように、ワタシはまったく経済学に関しては無知蒙昧なのですが、経済学者とか経済評論家とかの言うことがどうも腑に落ちないことが多々あります。無知蒙昧であるがゆえに理解不能なのかもしれないのはもちろんですけど。

たとえば「経済効果」。阪神タイガースが優勝すればその経済効果はどうのこうのってのは、そこここで見かける言説です。朝日新聞6月12日付の記事でも
阪神タイガース優勝なら、近畿2府4県の経済効果は1133億円――。日本総合研究所は12日、セ・リーグで首位を独走する阪神がこのままリーグ制覇した場合の試算をまとめた。さらに、大阪近鉄バファローズと阪神が日本シリーズを戦う関西決戦なら、「関西だけで1500億円を上回る効果が期待できる」としている。

この1133億円の内訳は甲子園球場の観戦者増で32億円、ファンの飲食が増えることで254億円、優勝セールで250億円、それに応援グッズの原材料増産とか輸送燃料などということです。

たとえば優勝セールってトコだけとってみると、確かにタイガースが優勝すると阪神百貨店はウハウハでしょう。しかし、その分阪急百貨店が落ち込むということはないのか。阪神百貨店が250億円の売上増になっても、他の百貨店がマイナス250億円であれば、「経済効果」としてはトントンです。甲子園球場の入場者が増えても、その分USJが減ればトントンです。

であるがゆえに、シロート考えでは「経済効果」が云々されるための条件としては3つしかないと思うのです。ひとつは、ほおっておくと貯蓄に回されるはずの金額が支出される。ふたつめが借金しての消費が増える。最後が域外からやってきた人が域内で金を使う。

ワタシ自身で言えば、毎月キチンキチンと貯蓄しているほどの余裕はない自転車操業でありますから、阪神が優勝して大いによろこんで優勝セールにでかけたとしても、近所の商店街での買物を控えるだけですし、飲食が増えても(ビールで乾杯)、その分映画に行かなくなるとか、本を買うのを控える(つーか、もー、今月はお小遣いがないや)ことになります。ま、一般庶民ってのは、おしなべてそうではないか、と。

域外から域内へのシフトという点はどうか。たとえば東京から大挙タイガースファンがおしかけ、道頓堀ダイブをするなんてことになれば、大阪のホテルや飲食業などは潤うだろうが、その分、関東の経済は冷えることになる。であるから、日本全体で言うなら、国外からタイガースファンが大量にやってくるということでなければならないはずだが、ま、ほぼゼロに等しいでしょうねえ。そういうお客は。

最後に残る可能性としては、借金しての消費。つまり「ローンを組む」というものだけですね。やればできるんだ、よし、いっぱつオレも、とばかりにマイホームを購入する。そういう人が輩出すれば、これはたしかに経済効果でしょう。

しかし、「飲食が増えて254億円」なんて記事はそういうことを意味しているわけではないので、そこんとこがどうもワタシには腑に落ちんわけです。

この朝日の記事の元になった原資料は日本総研でPDF形式として見ることができるのですが、それを見ても、飲食254億の根拠が、「成人ファン約146万人のうち半数が月一回5000円の飲食をするとすれば」ということであるとなっている。なんか、アホくさ、と思いませんか?

いやね、これがたとえば「東スポ調べ」なら、それはそれで面白いんです。なるほどね、そりゃトラキチなら月1どころじゃなく祝杯をあげたくなるでしょ、と共感できる。でもなあ、こういうのを発表しているのが日本総研なんですからねえ。同じ研究所が日本経済の行方だとかなんとかの天下国家の指針になるような調査報告なんかも出していて、それがマスコミの論調だとか政治の論戦とかに使われているんですからねえ。

「いやいや、こんなことは単なるジョークだよ、キミ」と日本総研の賢い研究者さんはおっしゃるかもしれん。でもそのPDFの文末に「ちゃんちゃん」とかなんとかとは書いてない。ということは「デフレーションの原因分析とそのインプリケーション〜金融政策、不良債権、グローバル化、景気低迷、資産デフレ」などというレポートもまた、単なる机上の空論、数字を電卓で足算しただけのジョークに過ぎないのでしょう。

そりゃね、シロート考えで言っても、阪神がこのまま優勝するようなことになれば、景気についても社会全体に対しても、なんらかの影響がでてくるような気はする。でもそれって146万人の半分が月5千円余分に飲み食いする、なんてことじゃないように思うのです。

じゃあ、なによ、と聞かれても、ワタシはわかりませんよ。そのワカラん部分をちゃんと絵解きして見せるってのが専門家じゃないか、と思うのですよね。
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いただいたコメント

ゆうたろう さんによるコメント
経済効果に対する疑問はごもっとも。私も経済効果発表のニュースを読むたびに「ウソつけ」と毒づいています。ただね、調べてみると、経済効果って、単にある出来事でお金がいくら動くかという予測なんですって。ですから、阪神百貨店の売り上げが伸びれば、阪急百貨店の売り上げは減るはずですが、経済効果の予測では阪急百貨店のほうは無視するんですって。物事の「裏」側は無視。だから、GDPが増加するかどうかは分からないんですって。最近の話題で言えば、神戸空港が出来たことで、当然、神戸空港の乗降客が新しく発生したんだけど、その数は、関西空港と伊丹空港で減った乗降客の合計にほぼ等しいというのがありましたね。これって、神戸空港の近くの人が「これまでは関西空港や伊丹空港を利用していたけど、今後は近い神戸空港を利用するんだもんね」ということですよね。こんなのも、経済関係者は「神戸空港の経済効果は○億円」なんて発表してるんだから、ばかばかしい話。新聞やテレビは
経済効果のニュースを流すときにこの辺をきちんと報道してほしいもんです。[2006.03.23  #265]

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