2 熊楠のカメ(続)
  [初出] 02.07.07  [最終更新]  [平均面白度] 4.72  [投票数] 18  [コメント数] 0
前回書いた『大正元年(1922)、いじめられていたところを熊楠に救われたクサガメの「お花」は』のところが気になって検索をかけてみた。「熊楠 カメ」。すると紀州民報の「南方熊楠の遺産」というページがヒットした。

余談になるが、文枝さんが現在も飼っている推定年齢百三十歳のカメは、熊楠が天神崎の帰りがけ、子供たちがいじめていたものを、八銭で買い取ってきたものだという。


文枝さんとは熊楠の長女。

なおも検索を続けると、「追悼 南方文枝さん」というインタビュー構成の記事(これも紀州民報)にぶつかった。ああ。亡くなっていたんだ。亡くなったのは2000年6月10日。カメの「お花」が死んだのが2001年の7月だから、ちょうど1年でお花も後を追ったことになる。インタビュー(生前に行われたもの)には以下のようなくだりがある。

 後藤 今でもあの亀は卵をかえすのですか。

 文枝 父がかわいがっていた「お花」がいまだに元気で、梅雨のころには産卵のため穴を掘ります。多い時には何十匹もかえりました。ところが近ごろ、大きな野良猫が土を掘り返して卵を全部食べてしまうので、子亀が一匹もかえらなくて寂しく思っています。

 後藤 一番大きな亀は年が分かっていますね。

 文枝 だいたい130歳ぐらいです。

 後藤 亀の年は甲羅などで調べるそうですね。

 文枝 天神崎で子供たちがいじめているのを8銭だして買い取って来た時、もうだいぶ大きかったですから。そこから数えて130歳ということだそうです。

 後藤 その南方先生の亀を天理大学の先生が研究したいそうです。日本で100年以上生きていて年が分かっている亀というのは他にいないそうです。ぜひとも調べさせてほしいと言っていました。それほど貴重な亀です。

 文枝 でも、最近ちょっとボケてきていますよ。(笑い)動作が鈍くなってきました。

 後藤 奈良の研究者は、猿沢池(奈良市)の亀を一生懸命調べているそうです。ところが、とても大きな池なのですが、周囲を住宅に囲まれているので亀は産卵することができません。水草も生えないので、人間が与えるえさを食べて生きています。水槽といっしょです。それに比べたら南方先生の亀は、池は小さいながらもちゃんと庭があって、産卵して、子供も孫もできているのですから、猿沢池の亀よりもはるかに自然な暮らしをしています。

 文枝 それにカツオをやりますしね。(笑い)冬眠する前にカツオの刺し身や鶏肉を食べさせます。

 後藤 きちっと冬眠しますか。

 文枝 しますよ。

 後藤 でも、穴は掘りませんでしょう。

 文枝 池の中で冬眠します。今年も啓蟄(けいちつ)の日に4匹そろって目覚めました。昨年11月から今まで、何も食べずに水の中でよく達者で居られるものだと感心します。

 後藤 天理大学の先生方は、南方先生の亀に関する書簡などを読んで、あこがれているようです。妙なファンがいるものですね。(笑い)

 
まるで浦島太郎だ。大正元年の8銭がいまの金銭感覚でどのくらいになるのか。気になる。
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