10 今、ここにある危機
  [初出] 2003.07.01  [最終更新]  [平均面白度] 4.13  [投票数] 24  [コメント数] 0
昨今の北朝鮮に対する報道やら世間の反応やらは、どうもワルノリの域に達しつつあるようで、あまり愉快ではない。他国の元首のことをここまで揶揄していいものか、と思う。戦前のマスコミは蒋介石を嘲弄し続けていたそうだが、そういうことも思い起こされる。

たとえばアメリカの全ニュース番組が連日与党幹事長のヘンタイ行為の数々を延々と嘲りの姿勢で流し続けたら、われわれの反米感情は抜き差しならないところまで進行してしまうだろう。

こういう世間の動向を背景にしてか、さいきん、政治家のタカ派的発言がヒートアップしている。自分の国を自分で守れる普通の国になるのだ、とかなんとか。

彼らの主張に共通している要素に「侵略なんてとんでもない。防衛を言っているのだ」というのがある。「だから軍事力を増強し、自立した防衛ができるようにならねば」と言うわけだ。

だったらまず軍事力より前に食糧防衛でしょ、と強く思う。

北朝鮮のミサイルによる危機がないとは言わないが、あちらさんにとってはそれは最後の手段であって、同時に自滅への道でもある。現実的には発動できないだろう。もしスイッチに手をかけることがあるとしたら、それはまったく非理性的行為である。たとえば向こう見ずにカッとなった時とかね。だからこそ、あまり嘲弄的なことを言ってはいけないと思うんだけどなあ。だいいち、そういうこと言うの、カッコ悪いし。

ゆえに現実的な危機としてはミサイルのそれはそう高くないと言えよう。それ以上のレベルにある危機が食糧だ。だって、現状で半分以上を海外からの輸入に頼っているからである。有事という意味では、もうすでに現在が有事なのだ。

べつにどっかの国が攻撃の意図をもって日本への食糧輸出を止めるとかというような事態を想定しなくても、世界的な不作とかがあれば、即座に「有事」が顕在化する。

金額ベースで言えば日本の食糧輸入額は5兆2500億円(2001年)。このうち1兆5800億(30%)がアメリカから、2位は7200億円の中国、3位5200億円がEUからの輸入である。

金額ベースでは、いわばたいしたことない。金融機関などへの公的資金注入の金額を見ているとそう思う。しかし、金を積んでも、だめな場合はだめだろう。軍事力を背景にするなら別だが。

極端な話、アメリカはたった1.5兆の「戦費」で日本を大混乱状況に陥れることができる(ま、他の輸出入がありますから、そう単純にはいかないのはもちろんですが)。イラク戦争の戦費が9兆円とか15兆円だとか言われているわけだから、とってもお安い。

アメリカにしても中国にしても、もし極端な不作に陥った時には、「防衛上」食料の輸出を制限するだろう。アメリカにしても中国にしても食料が有り余っているわけではない。アメリカの食料自給率は130%(カロリーベース)程度しかなく、中国に至っては穀物自給率は94%しかないのだ。

テポドンとかノドンとかより、ずっと「今ここにある危機」ではないか。口角泡を飛ばし、国家の安全を熱弁している先生方は、ちゃんとコメ食え食えしてらっしゃるだろうか。国家安全のために、ごはんとおしんこ、みそ汁で晩ご飯を噛みしめてらっしゃるだろうか。

気になる。
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