15 樺太犬たちの名前
  [初出] 2006.03.27  [最終更新]  [平均面白度] 4.59  [投票数] 39  [コメント数] 1
このコーナーは「犬の名前・人の名前」であるのだから、第一次越冬隊に同行した犬たちの名前を記しておきたい。
1  テツ6歳   越冬期間中に死亡
2ベック3.5歳越冬期間中に死亡
3クマ(比布)4.5歳越冬期間中に行方不明
4リキ6歳翌年死亡を確認
5アカ5歳翌年死亡を確認
6デリー5歳行方不明(鎖はずれ)
7クマ(風連)3歳行方不明(首輪抜け)
8ペス4歳翌年死亡を確認
9クロ3.5歳翌年死亡を確認
10クマ(紋別)3歳翌年死亡を確認
11ジャック3歳行方不明(首輪抜け)
12ポチ2.5歳翌年死亡を確認
13ゴロ2歳翌年死亡を確認
14アンコ2歳行方不明(鎖はずれ)
15モク(深川)2歳翌年死亡を確認
16シロ2歳行方不明(首輪抜け)
17タロ1歳生存
18ジロ1歳生存

この他にメス犬1頭と宗谷に乗り込んだものの越冬隊に参加しなかった3頭がいる。
19  シロ(メス)0.5歳  宗谷で帰還
20モク(札幌)6歳越冬に参加せず、帰還中に病死
21トム7歳越冬に参加せず帰還/td>
22ミネ(メス)0.5歳越冬に参加せず帰還/td>

年齢は出発時。同名の名前が複数あり、それらは出身地の地名を付して区別されていた。クマという名前が多いのは大型で長毛である樺太犬ゆえのことだろう。

シロは昭和基地で8頭の子犬を産む。それらの名前はポト、ヨチ、マル(以上♂、以下5頭♀)、ユキ、ミチ、スミ、チャコ、フジ。

このうち命名の由来がはっきりわかっているのは南極生まれの8頭の他はタロとジロだけである。タロとジロは生まれてすぐに南極観測のための訓練チームに購入されており、そこで白瀬隊のそり犬の名前であるタロ、ジロと命名されている。

「犬たちの南極」(菊池徹 文春文庫)によると、ポトは越冬隊が登頂したポツンヌーテン山にちなみ、ヨチは立山にその名をうたわれた名犬の名前で、マルは白瀬隊のそり犬からの命名であるという。

これらの名前を見渡してみると、昭和30年当時の犬の名前の命名イメージが少しは見えてくる。「ペス」は現在ではあまり使われていないが、当時は犬の名前として、とてもポピュラーなものだった。

心ならずも昭和基地に残された15頭の犬たちの中でタロとジロだけが生き残ったのはなぜなのか。本人たちはしゃべれないし、見ていた人もだれもいないのだから、想像するしかないのだが、第一次・第三次越冬隊の隊員であり、犬係でもあった北村泰一がその著書「南極第一次越冬隊とカラフト犬」(教育社 1982)の中で述べている推察がもっとも説得力がある。

他の犬たちは南極に来る前に別々の場所で飼われていたが、タロジロは生後3ヶ月で樺太犬訓練所に入り、「物心がついたときには、もう昭和基地にいた」。鎖からはずれ、あるいは首輪から抜けた犬たち(15頭中6頭)は、100kmほどの範囲で行動し、アザラシの排泄物やペンギンを食っていたと想像されるが、「そのうちに、それぞれの故郷を思い浮かべてあちこちさまよったに違いない。しかし、タロ・ジロだけは、自分の帰るべき場所は、昭和基地しかないと考えていたのではないだろうか」というのである。

この「南極第一次越冬隊とカラフト犬」という本は、関係書籍の中で(ぼくが読んだ中では)、もっとも詳しく、またもっとも読みやすい本である。犬のことだけではなく、最初の南極越冬隊の事績を知るには、これがもっともおすすめ。ただし、現在は絶版であるようだが。

この本は2頭の犬の生存が発見されたところから書き起こされている。宗谷はオングル島に接岸できるわけではない。そこは厚い氷に覆われているからだ。そのため、砕氷して到達できた地点からヘリで資材や人員をピストン輸送することになる。一番機が犬の生存を確認した。「やがて一番機が帰船し、やや詳しいことがわかった。生きていた犬は黒い犬でモクとクマらしいが、恐ろしくてだれも近づけないという」。犬係であった北村はただちに基地に出発する。
目の前の犬たちは、北村が想像していた、やせこけている姿とは似ても似つかなかった。まるまると太り、まるで小熊のようだ。彼らは首を下げ、上目でじっと疑うように見上げる。あきらかに警戒している。犬たちが前に進むと、今度は北村があとずさる。一年前に彼らを置き去りにしたという、スネにキズを持つ身には、ひょっとしたら自分を恨んでいるのではないかという気持ちがチラッと頭の中をよぎったからだ。

なんとか通じ合えないものか。北村は手マネ足マネで話しかけ、号令もかけてみた。それでやっと近づくことができたが、頭をなでても容易にしっぽを動かさない。

「なあ。おれだよ。一年前のおれだよ……」

北村は一生懸命に呼びかけた。

「なあ。おまえはクマか?」

反応がない。

「それではモク?」

北村はこうして黒い犬たちの名を片っぱしから呼んでみた。最後に
「タロ?」
と呼んだとき、しっぽがピクッと動いたような気がした。
「タロ……?」
ともういちど呼んだとき、今度ははっきりとしっぽが動いた。アッ! 反応があった!

「おまえはタロ! するとおまえはジロか?」

今度は、もう一頭の犬がマネキネコのように右前足をひょいと上げた。これはジロの癖であった。その目で見ると、ジロらしい犬の胸と前足には白い毛がまじっていた。これはジロの外見上の特徴であった。もう間違いはない! 犬たちも北村を思い出したらしい。しっぽを振り出した。この二頭がタロとジロとわかったとき、にわかに北村の胸にグッと熱いものがこみあげてきた。

「よくもまあ……」

と、あとは言葉にならなかった。


一号機で飛び、犬たちにファーストコンタクトしたのは第一次の越冬隊員であった大塚正雄であった。第三次では観測隊員で越冬はしない。大塚はいすゞから派遣されており、機械の担当である。その大塚の証言を第三次越冬隊員の深瀬和巳が聞き取って書き残している(「からふといぬ」犬飼哲夫編所収)。
「確かに気持ちが悪かった。どのように変わっているのかわからないし、第一、生きていたということ自体にまだ不思議な気がしているのだから。しかし、私はこの前この犬たちと一年間基地で暮したのだし、止むを得なかったからとはいうものの、置き去りにしていったものの一味には違いない。うしろめたさほどではないけれど、犬に対してはやはり何かひっかかる感情はあったわけです」
「お互いにシリごみしているのをみているうちに、やはり私が行ってみることだと思った。たとえ狂暴化していて、腕の一本や足半分ぐらいくいちぎられても仕方がない。わたしたちが残してきた犬なんだからと、”あとのことはたのんだよ”なんてジョウ談をいいながらちかづいてみました」
「ところがどうでしょう。ほえもしないしあとずさりもしない。ちゃんと昔の主人をむかえてくれた。シッポをふる。体をすり寄せてくる」

少しニュアンスが違うが、その「違い」の部分に犬係の北村の思いの深さがあるように思う。


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いただいたコメント

さんによるコメント
こんにちわぁー。さきでぇーす。私の悩み聞いてくれますぅー?

あのぉー私『早瀬沙紀 12歳』は岳くんって言う人が大好きなんです

ぅー。でも彼は女の子に興味がなくってテニスばっかなんですぅ。

でも強いんですよぅ。だって全国ですもんっ!でも学年一かわいい

私も見てくれなのぉ。それが私の悩みなのぉ。あともうひとつ・・・

さきLOVEファンクラブが岳くん好きになると怒るのぉ。もぅさき

悲しくって。ニャーンちゃって!あはっ!!私は誰に何を言われても

あきらめないもんっ!もぅーさきって人気ものぉー!!

かわいすぎちゃって困っちゃう!

誰でもいーからメールくださーい!

人気ものさきより[2006.09.26  #379]

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