10 昭和初期のジョン
  [初出] 01.07.21  [最終更新]  [平均面白度] 4.17  [投票数] 42  [コメント数] 0
丸谷才一の書くものが好きで、出版されるとついつい買ってしまう。だからほとんどの著作は持っているはずなのだ。そして時々(特に風邪気味の時などに)順不同に取りだしてきて、読む。

ひとつきほど前にも「男もの女もの」を出してきて読んでいると、『わたしはいつだつたか、犬の名前の付けかたを論じたことがあつて』という部分にぶつかった。

これは気になる。もしかしてトテツもないことが書いてあって、ぼくの疑問やなにかも、読めば一気に氷解するかもしれない。以来、折に触れて探しているんだけど、それらしきものにはぶつからない。

「軽いつづら」の中に「名犬のこと」というタイトルで、西郷隆盛の(銅像の)犬の名前について書いたものがあり、そこにレヴィ=ストロースの学説として、オーストラリアやアメリカの原住民は犬に人の名前や親族呼称を用いるが、西洋人は犬専用の名前をもっている、とさらっと紹介してあるのをみつけたくらい。

えーっと、ちなみにあの犬の名は「ツン」です。

おそらくこれじゃないでしょう。これだったら「犬の名前の付けかたを論」ずるほどでもない。さらっとした紹介にすぎないように見える。しかし、他にはいまだ見つからない(どなたかご存じでしたら、教えてください)。

ただ、犬の名前全般については未発見だが、興味深い記述をみつけた。夫人の子供の頃の思い出として『これをかけると、飼つてゐたジョンといふ犬が悲しい声をあげた。それで大人たちは、あれは悲しい曲だからジョンが泣くんだよ。かけるのはよさうね、と言つた。』

いましたよ、いました。ここにもジョンが。

丸谷才一は大正末年のうまれだから、夫人も昭和初年あたりの生まれと考えてよいだろう。旧制の女学校で学んだというような文章も見た記憶があるので、そうはずれないはずだ。引用部分の口調から見て、これはハイティーンの女の子に向けた言い方じゃないように思う。せいぜい十かそこらまでの子供に言い聞かす口調だ。ということは昭和十年代。

このころにすでにジョンという名の犬はいたわけだ。
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