4 また来た。なぜだ
  [初出] 2004.06.24  [最終更新]  [平均面白度] 4.78  [投票数] 9  [コメント数] 0
チビが去って十日あまりたつが、なんということか、今日からまた新しい猫が来てしまった。

家の道沿いでヒョウタンとヘチマをクーラー代わりに育てている話は何度もしたと思うが、これらはなかなかのくせ者で、夏場数日放っておくと、蔓が伸びすぎてしまう。今朝も水をやったあと、どこをどのように切るかなどと考えながらヘチマを見ていたところ、後ろに何か気配を感じる。

振り返ると、すぐ後ろに小さな仔猫が座ってこちらを見上げている。皮膚病なのか、ずいぶんボソボソだし、目も目やにでいっぱいだ。こちらを見上げて鳴こうとするんだが、声がでない。おやおやどうしたことだ。

家の中のツマを呼ぶ。おい、また猫がきたぜ。

ツマがドアを開けると、その猫は悠然と家の中に入り込んでしまった。もうこうなってはしかたありませんね。この時点でココロの中では移民として裁可しました。

しかし、前回のことがあるから、細心の注意を払う。まず、ココロを動揺させない。誰がなんと言おうと決定を変えることはない、と強く思う。それから、触りたいのはやまやまだが、ぼくはいっさい触らないし、声もなるべくかけない。できるだけ離れた位置にいる。寝室にいた先住の後楽園を仕事場につれてきて、横に座らせ、仔猫にかまわず仕事をする。ま、忙しかったこともあるんだけど。

そういうこちらの配慮が効いているのか、それとも今回のは病気で若干弱っていることがわかっての遠慮なのか、先住者たちは、少しは吹くけど、前ほどではない。そそ、と逃げ去るのみだ。

獣医へ連れて行ったが、風邪とダニによる疥癬があるものの、猫エイズも白血病も陰性。これはよかった。陽性ならどうしようと、それだけが気がかりだったから、この検査結果には心底ほっとした。

今回のもオス。白猫にところどころ破れたアメリカンショートヘアーの毛皮をうえからかぶせたような、珍しい体色で、なかなかカッコよろしい。ツマは前のチビより心なしか穏やかでいい顔をしているようだという。ぼくにはその違いはわからない。ただ、こんどのやつは京劇の孫悟空みたいな顔だと思うだけである。

これも1月ほど前から近所の駐車場に暮らしていた野良であることは、先刻知っていた。

「ねえ、名前、どうする? 早く名前を付けないと呼べないから非常にこまる」

ツマは言うけど、まだ決定していない。後ろ足が両足ともふとももくらいまで白いからソックスとかブーツとかいう名前も頭に浮かぶ。肩先にイナズマ型の白毛が流れているのでサンダーとか、ぜんたいとしてアサリ柄であるからアサリとかも。

「男の子だから、あまり弱っちい名前はオシが効かないしね。呼びにくいのも困るし。ブーツなんて弱そうじゃん」
「でも長靴を履いた猫は最後には飼い主を王様にしたんだぜ」
「じゃ、それもいいかもね」

ただ、思いつく名前は孫悟空以外はみんなカタカナだ。ウチの猫は伝統的に日本語名前であるので、そのあたりの整合性が気になるところ。そんなこんなで名前はまだない。

しかし、なんであんなに自然に、かつ、決然と家の中に入ってきたんだろう。もうきっぱりと決めている、という態度であった。

ヤツはまだ弱っているのか、リビングでおとなしくしている。時々、おもちゃあいてに激しく遊ぶが、すぐにまたマットの上で丸くなる。鼻は通らない。ときどきズピーというような音のくしゃみをする。ウンチもまだ出ない。それでも餌はよく食べる。水もうまく飲む。

先住者たちは二階から降りてこない。不退転の強いココロでいないと、誰にとってもむちゃくちゃになる。そう思ってリキんでいたせいか、肩がこり、右目と右の奥歯が激しく痛む。結局、誰にもまして小心者なのである。
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