2 平和の回復
  [初出] 2004.06.14  [最終更新]  [平均面白度] 4.67  [投票数] 3  [コメント数] 0
新入りが来たことで、古手がめいっぱい怒っているわけだけど、よく考えると、なんで怒っているのかが、いまひとつわからない。

新入りに対して怒り、威嚇するのはわかる。縄張りを侵害しているからだ。追い出したいわけだね。

しかし、怒りの矛先が飼い主であるぼくに向けられるのは、なんでかよくわからない。いくら謝っても、だめっていうところがわからない。

彼女の目的が、新入りの排除であるなら、この戦略は間違っている。ぼくの膝の上に陣取って、もし新入りが近づいてきたらはげしく威嚇すればいいのだ。それを続けると、飼い主は、最終的には根をあげて、新入りの養子先を真剣に探すだろう。家庭は平穏と幸福の根拠地であるべきで、なにも争いの調停に憂き身をやつさなきゃならない構造にのめりこんでいくことはないのだ。

古手でもはぎの方は、それがわかっている。新入りとは依然仲が悪いものの、飼い主であるわれわれに敵視はしていない。昨夜も定位置であるツマの枕元で寝ていた。

問題は、もう一匹の猫である後楽園だ。ぼくもツマも寄せ付けない。耳を伏せ、毛を逆立てて怒っている。つまり本気モード全開の憤怒なのだ。

ぼくの愛が新入りに移って、自分が放り出された。だから怒る、というならまだわかる。でもそんなことはないよと何度も説明しているのにもかかわらず、その説明を受け入れない。昨夜は、2階の和室の隅にひきこもった後楽園のそばにわざわざ陣取り、ずっと本を読んでいたが、だめだった。隅っこから出てこないし、ときどきこっちを威嚇する。

これはもはや「嫉妬」であるとしか理解できない。

いやはや、参りました。

前に書いたように、確保してすぐに、養子縁組先候補二軒にオファのメールを出していた。嫉妬の大暴れに辟易したわれわれは、ふたたびチビを仕事部屋に隔離してから(何が起こるかわからんからね)、短時間ではあるが買い物に出かけた。

帰ってくると、後楽園は依然二階にいたが、ずいぶん態度が軟化している。吹きもせず、体も触らせる。おや、やっと状況を受け入れたのか、と思ったが、チビに対する敵視はまったくかわっていない。そのとき、電話機の留守電ランプが点滅しているのに気が付いた。

写真を送っていた人から、ぜひに引き取りたい、いますぐでも訪問したい、至急返事下されたしというメッセージが入っていた。

このせいなのね。態度の軟化は。そうとしか考えられんでしょ。

チビは一人住まいの看護婦さんに引き取られていき、われわれは平和な日々を取り戻した。しかし、その日々は必ずしも以前と同じではない。やつらの精神性が今まで考えてきたレベルよりずっと高いのかもしれないと思うようになったからだ。

少々ビビっているのである。

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