1 音吉と南セントレア
  [初出] 2005.02.11  [最終更新]  [平均面白度] 3.71  [投票数] 7  [コメント数] 0
なんだかんだとバタバタ暮らしていると、うかつにも2月も中旬となってしまった。11月の末から、ここには何も書いていないのだから、無事に暮らしておるのかご不審の向きもあるかもしれないので、テンション低いままとりあえず書いておく。

バタバタしているとはいっても、本は読んでいる。近年にないほどの勢いだ。一昨日からは三浦綾子の「海嶺」。すごくおもしろい。

江戸時代、千石船が難破漂流し、アメリカまで流されていく。その後も幾多の苦難をして、世界一周をしてしまうことになった日本人音吉の生涯をドラマチックに描いた小説。

この人およびこの船(宝順丸)のことは春名徹「にっぽん音吉漂流記」でかつて読んだことがある。この本もたいそうおもしろかった(たしか何かの賞を受賞したんではなかったか)のだが、残念なことに、元の単行本も文庫化されたもの(中公文庫)も現在入手しづらいようだ。

そちらに比べても「海嶺」は面白い。なにしろ3巻もあるから、読み応えがある。

ぼくは漂流モノが好きなので、けっこう読んできているつもりだが、数ある漂流モノの中でも、上位に食い込むことは間違いない。なんといっても出航前の人生についてしっかり書き込まれているので、登場人物たちの悲しみがよけいに心にしむ。おそらく史実ではなかろうと思うのだが、音吉の押さな稚い恋についても詳述してあるので、ああ、こういう未練をのこしつつの漂流であったのかと思うと、なおさらドラマが胸に迫ってくる。

ここんとこはコンピュータがぶっこわれてその復旧だのなんだのに時間をとてつもなく費やしたのだが、まさに寸暇を惜しんで読みふけってしまった。

ようやく上巻を読み終えたところ。今夜からは中巻に突入する。

てなところでテレビニュースをみていると愛知県美浜町と南知多町との合併についての話題をやっている。このふたつの自治体は合併後「南セントリア市」という名前になるという計画がすすんでいるというのだ。驚きましたね。ぼくなら、こんな名前の住所はいやだなあ。なんだか宇宙戦艦ヤマトみたいだ。結婚して市役所につとめて子供をそだてて年とって漬け物でお茶漬けを食べるというような人生にはまるでそぐわない。

ニュース番組の中では、地元の若い女性が「都会だったらともかく、こんな田舎にはこの名前は似合わない」と言っていたが、都会田舎は関係ない。都会だって嫌でしょう。

ぼくがなぜこのニュースに驚いたかというと、この美浜町ってのが宝順丸ならびに音吉たちの出身地であるからである。

海嶺の上巻の半分ぐらいは美浜での彼らの日常がゆったりと語られている。読書世界の中ではこの海沿いの集落にぼくは逗留したのである。

ま、ただの偶然なんですけどね。偶然とはいえ、いまはもう音吉や琴や重右衛門たちは他人とは思えない気分になっちゃっているんですね。

なんだかなあ。
《→このページの先頭へ》

この記事は面白かったですか?

お読みになっての印象を5段階評価のボタンを選び「投票」ボタンをクリックしてください。

つまらなかった           おもしろかった  

 

≪この記事に対していただいた「投票」7件、「平均面白度」3.71≫

いただいたコメント

現在この記事に関するコメントはありません
  #

コメントを書く

  
メールアドレスはWeb上では公開されません