10 あえて小嶋さんを弁護するのだ 2
  [初出] 2006.02.07  [最終更新]  [平均面白度] 3.5  [投票数] 4  [コメント数] 1
言うまでもなく、耐震偽装事件は重大な事件である。社会を成り立たせるためのもっとも根っこの部分の信頼を大きく突き崩すような衝撃をわれわれに与えた。

この事件は解明されなければならないし、断罪されなければならない。

その弾劾の矛先が小嶋氏に向かうのは、どう考えても納得できない。

もちろん、もし一連の偽装設計を指示した、あるいは指示しないまでも事前に認識していたとするなら、もちろん小嶋氏は責めをおわねばならない。同じ事は木村建設の東京支店長にも言える。

だとすると、まずはっきりさせなければならないのは、彼らが設計の偽装に加担していたかどうかということであるはずだ。

昨年末の事件発覚当時はその方向で疑惑の追及が進んでいたようだが、2ヶ月以上たった今、彼らにその罪を負わせることはできなかったように見える。

ぼくたちはマスコミを通してしか、詳細を知ることはできない。ぼくの知らない事情はいっぱいあるだろうし、隠されていることもたくさんあるだろう。しかし、小嶋氏や篠塚氏が偽装設計に加担したという疑念があるなら(こんな興味深いニュースは他にあろうはずもないから)その一端でもわれわれの前に漏れだしているはずだ。それがないというのは、警察だけでなく、マスコミが一生懸命さぐっても、その気配がなかったのだと考えられる。

前回も書いたように、論理的に考えて、そもそも小嶋氏や篠塚氏が「あらかじめ知っていた」ということは考えにくいのだ。

われわれは、姉葉設計士がインチキな設計をすることで実現した鉄筋量より少ないのに、適法な設計が存在していた事を知っている。

篠塚氏が耐震偽装設計を命じたのなら、そうすることによって建築のコストを大きく削減できるというメリットがあるからだろう。しかし、あえて違法な設計をしなくても、適法にもっと鉄筋量の少ない建物ができるのだ。それなのに、あえてむちゃくちゃな悪事に手を染めることは、正気の沙汰ではない。

小嶋氏にいたってはなおさらである。

もちろん、小嶋氏篠塚氏とも、いくつかの犯罪の疑惑が指摘されている。小嶋氏においては耐震偽装の事実を知ってからも販売を続けようとしたのではないかとか、篠塚氏にあっては姉葉氏からキックバックを受けていたとか。これらは償ってもらわなければならないが、どれをとってもチッセエといえば不謹慎だけれど、この巨大な事件の本質とは、まったく関係ないし、比較にならないことである。

いわば連続殺人の死体遺棄現場での不法駐車をあげつらうようなもんだ。

もし小嶋氏が主張するように、偽装設計を事前にまったく知らなかったとしたら、彼は彼がいうように、文字通り、最大の被害者である。

責任をおうべきなのは、これも小嶋氏が言うように、検査機関であり、検査機関を監督する地方自治体であり、検査のシクミをつくった国である。

国もそのことを早くから認識していて、びっくりするほど素早く住民救済の方向を打ち出した。神戸の地震の時には、個人の財産に対し、直接的な支援はできないと突っぱねた国であるのに、だ。

なぜ検査機関の責任かというと、理由は単純で「金を取っているから」である。金をとって検査して、法に適合するとのお墨付きを与えるのが検査機関である。その検査に遺漏があったなら責任を取るのが当たり前である。

検査制度はそもそも「悪意の偽装」ということを想定していなくて、なんて寝ぼけたことを言っている人が多いが、それだったら、何のために金をとっていたのか(あるいは何のために「形だけの検査」を行っていたのか)。

どう考えても、あのマンションを買われた方々としても、小嶋氏の主張するように、国相手の裁判に共闘するのが最善の作戦であるように思うのだ。

「反省の気持ちがない」とか「人に責任を押し付ける前に」とかと、散々に言われる小嶋氏だが、ぼくは彼のどこが悪いのか、何が悪いのか、ずっとよくわからないでいる。せいぜい「運が悪い」くらいしか思い浮かばない。
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いただいたコメント

通りすがりのかおる さんによるコメント
小嶋社長。私も最初は何と悪そうな人だろうと漠然と思っていました。近所の行きつけの美容師さんも「顔も態度も見るからにヤクザみたいだ」といって二人で悪口をいってたものです。でも、だんだんと「待てよ」と思うようになりました。自分の言動に対する反省もあるようだし、なおかつ反論もしているところをみると、本当にそうなのかもしれない、と思うようになり、今のところ観察しています。何事もある程度時間がたたないと本当のところは分かりませんからね。それについている弁護士さんはみんな信頼に足る非常に誠実な人ばかりなんですよね。これも私が見方を変えつつある原因です。おそらく、あなたの見る目は正しいのではないでしょうか。[2006.02.20  #263]

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