12 梅の収穫
  [初出] 2005.06.19  [最終更新]  [平均面白度] 2.11  [投票数] 18  [コメント数] 2
ぼくが味噌や梅干しをまいとし製造していることは、ここにも何度も書いている。

日常雑記を公表するって、ヘンなことだね。友人と会って近況報告を交換し合ったりしていても、「おれ、梅干しを漬けているんだ」なんてことを言う確率は低い。だから友人たちでも、こことか「もったいないのココロ」を読んではじめてぼくのこういう行動を知るにいたるわけだ。

Sさんはかねてからの友人であるが、味噌つくり参加は昨年からである。ぼくの書いていることを読んで参加を申し込んできた。

味噌作りは(近代兵器が整備されている環境だととくに)とても愉しい。Sさん夫妻も味噌製造を楽しんでいただけたようだ。その後、ひんぱんに電話がかかってくる。

「味噌のうえに液体がしみ出してきたが、これは正常やいなや」とか。

ういのお。ぼくらはすでにそんな初々しい感動は忘れちまっている。

「いいの。ほっとけば。夏過ぎにはイヤでも味噌になってるから」

そんな会話の最後はつねに「次のイベントは何?」「ラッキョウか梅干しかな。どちらも6月」なんてふうに終わる。しかし、味噌は参集して製造する意味とヨロコビがあるのだが、梅干しはそれができにくい。梅を塩とともにカメに入れる作業そのものはあっけないほど短時間で終わるし、複数で協力し合って作業するというようなことでもない。反面、梅の入手や、必要なら追熟/あく抜きには事前に数日がかかるし、製造の最大のイベントは「つけ込み」ではなく、土用干しであるからだ。まさか7月下旬までみんなのぶんをウチに保管しておき、その時期に再参集して2泊3日の土用干し合宿を行う訳にはまいるまい。

ともあれSさんとの次回イベントは梅干しということになっていた。それが思わぬ展開を見せる。

Sさんの母方の伯父上が青梅方面の在の方で、広い屋敷に住んでいる。Sさんが近況報告の中で梅干し製造の予定を語ると、梅の木は庭に何本もあり、毎年取りきれないでいるから、ぜひ来てくれ、取ってくれということになったらしい。で、昨日、ぼくもお相伴させてもらった。

広い庭には梅の木が20本くらいはあり、梅酒用の品種(白加賀)で、かつまだまだ青い感じだが、無慮無数に実っている。われわれは脚立にとりついて、せっせと梅もぎに精を出した。

芋掘りからはじまって、リンゴ狩りだのなし狩りだの、果実等を採集するイベントは各種体験しているが、その中にあって、梅もぎの愉快は上位にランクインする。手で容易にとれるし、なにより「すぐには食べられない」というところがいい。果物の場合はその場で食べ始める。まあ、それが醍醐味ではあるのだが、反面、たいてい3つ4つ食べたところで飽きてしまう。食い飽きると収穫の意欲も減退する。芋掘りは重労働だし、松茸狩りは収穫量が少なすぎる。

あっと言う間に巨大籠いっぱいの青梅の収穫を見た。

帰ってきて計量してみると、我が家にいただいた分だけで、なんと18kgもあった。梅干し用には追熟をはからねばならないので、現在、風にさらしている。それを横目にどのように配分するかの煩悶中である。梅干し・梅酒比率。こんなに大量に有るのだから梅ジャムというチョイスもある。こうやって座っていてもムヒムヒと品の下がった笑みをおさえることができない。

「収穫収穫」

収穫って、なんでこうもうれしいのだろう。思うに、人類がまだお猿だったころ、長い徒労の旅のはてに果樹を発見した時のヨロコビに通じるんじゃないか。いわば根源的な喜びなのだ。第一次産業従事者はいざ知らず、ぼくらのように労働と生活(くいもの)の間の距離が広がり、記号や約束が何重に間に挟まっている生活をしているものにとっては、脳幹に直撃する愉悦なんではないかと思う。

オークションや買い物、あるいはUFOキャッチャーをはじめとする各種ゲームも形を変えた収穫であるから同じ流れのヨロコビがあるのだろうが、ぼくの脳が粗雑であるせいか、直裁に食い物が手に入るものの方がずっとキくのだ。
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いただいたコメント

YS さんによるコメント
味噌初心者のSです。初めて生まれてくる我が子を待つ父親の心境で、もう気になって気になって、、、。昨夜は味噌の上に溜まってきた液体を醤油代わりに使い、片栗粉をまぶして素揚げした鰤とにんにくの芽ともやしの中華風炒めと鰯のつみれ汁を製作。赤ちゃん醤油みたいでなんともいえん味に自然頬が緩むのでありました。
細かいことでアレですが、梅狩りに行ったうちは父方の叔父(まるで違うじゃん>石田さん)宅どす。
我が家のベランダも梅を並べた盆ざるがズラリ、梅干予備軍として熟成中であります。来週か再来週は拙宅の庭木剪定、8月には入笠山キャンプを計画しております。キャンプはともかく、剪定はかったるいです。[2005.06.20  #189]

うまやど さんによるコメント
六さん、お久しぶり。ここいつも楽しんで読んでます@うまやど

梅干しは大好きで、一度、製作に挑戦しましたが失敗しました。
塩の吹いたごてごての梅干しになりました。
どこでどうまちがえたのか・・・
今年もできたら挑戦したいけど、減塩などは嫌いで、極スッパを
作りたいです。

ところで・・
「もったいない」が国際的な言葉になってきました。
とってもうれしい。六さんの先見の妙ですね。

さて、本題にはいりますが、とりあげてもらいたいことが
あります。
もったいなくいて。
初代アイポッドの液晶が見えなくなってきました。
なにせ、せっせと2.000曲もコレクションしたのだけど、
これが全部わけわからなくなるなんて、もったいない。
アイポッドで検査してアップルの話を読んでみると
液晶なんてそんなもので全とっかえするよりしょうがない、
などとコメントされてます。

でも、最近はカメラマンなんかが撮った写真をアイポッドに
入れて、保管したりしています。友人のカメラマンに相談されたのでアイポッドいいよって言った矢先の出来事。

それでお願いですが「液晶」というのを取り上げて話を聞かせてくれませんか?液晶に関しては「もったいないのこころ」はないんでしょうか?
[2005.07.09  #191]

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