10 くまんばちとは何か
  [初出] 2005.06.09  [最終更新]  [平均面白度] 2.93  [投票数] 56  [コメント数] 1
「くまんばち」とは何か。

どこでどうとっちらかったかわかんないんだけど、ぼくは「くまんばち」=マルハナバチと思っていた。なんでそう思ったかはわからない。マルハナバチというのはよくみかけるでっぷりと太った丸っこい蜂だ。花にあつまってきて、ブンブン飛び回っているアレだ。マルハナバチ(というのはミツバチ科マルハナバチ属に属する蜂の総称)を俗にそう呼ぶのだと思っていた。

なんでそう思い込んでいたのか、よくわからない。子どもの時にまわりのオトナたちがそう呼んでいたのを聞き覚えた(通常の言語習得はそのように行われるでしょ)のか、それとももう少し大きくなってから本かなにか、もしくは虫好きの友人あたりから教わったのか。

いまになって振り返ってみると、どうも「日常語」としてはくまんばちという言葉はなかったのではないか、と思える。自信はあまりないが。

根拠のひとつは、マルハナバチを見かけると、(現在の)ぼくはそれを「マルハナバチ」として認知し、くまんばちという言葉を口にしたことはほとんどなかったということ。もうひとつは、くまんばちという言葉を聞くと、反射的にリムスキー=コルサコフの「熊ん蜂の飛行」という小品のメロディーが頭の中で鳴り響くこと(これはかなりやかましい)。

どんな曲だったかお忘れの向きは熊蜂の飛行で聴いていただけると、あ、これねと思い出されると思う。

いずれにしても「くまんばち」はなんとなく、ぼくの中では「日常語」クラスに分類されていないような位置づけなんだ。

おそらくは小学校の高学年か中学校の自分に友達の誰か(もしかしたらその後ハチの研究を仕事にしてしまったN)に教えてもらったのではなかろうか。

ともあれ、くまんばちはぼくにとっては「マルハナバチの俗称」であった。一昨日まで。

一昨日の夜、なんの霊感が降りたのかわからないが、ぼくは辞書で「くまんばち」を引いた。理由なんかなんもない。辞書ソフトはほぼ常時立ち上がった状態になっているのだが、その検索語欄に「くまんばち」とタイプしたのだ。辞書ソフトには国語辞典として大辞林と広辞苑が入っている。そのどちらの語釈の中にもマルハナバチなんか出てはこなかったのだ。驚きました。

大辞林には
くまん*ばち【熊ん蜂】[2]
(1)スズメバチの別名。
(2)クマバチのこと。
とある。広辞苑には
くまん‐ばち【熊ん蜂】
「くまばち」の転。
となっており、さすればとくまばちを引くと
くま‐ばち【熊蜂】
(「くまんばち」とも)
(1)ミツバチ科のハチ。大形で体長約25ミリメートル。体の大部分は黒色で、胸背は黄色の毛におおわれる。体に毛が密生して熊を思わせる。朽ちた材の中などに長い穴をあけ、中に花の蜜・花粉を集めて産卵。
(2)スズメバチの俗称。〈日葡〉
となっている。

ぼくはクマバチという種を知らなかった。ぐぐってみると、そう稀な種ではないようだし、平凡社の世界大百科にも「マルハナバチに似るが毛は少なく、体はいくぶん扁平」とあるから、もしかしたら見ていてもマルハナバチとして認知していたのかもしれない。お、ほんまにクマバチというハチがいるんや、というのが驚きのひとつめ。

もうひとつの驚きがくまんばち=スズメバチであるということ。スズメバチとマルハナバチは一見して違うし、身を守るためにも見分けることがごく重要であるから、見間違うことは少ないと思う。飛び方からして違うから、遠目にも見分けられる。蜂に疎いぼくでも一目瞭然だ。ふうん、スズメバチのことをくまばちと言うこともあるんだ、というもの。

ま、いずれにしてもマルハナバチ=くまんばちは少なくとも辞書のレベルでは見当たらないってことになった。考えられる可能性はみっつある。

ひとつは、マルハナバチのことをくまんばちと呼ぶ地方があって、辞書の編纂者はそれを知らなかったか、知っていても記載しなかったという可能性。

ふたつめが、ぼくが個人的に間違っているという可能性。

さいごが、マルハナバチと(現在の)クマバチをふくめてくまばち、くまんばちと呼んでいた可能性だ。

ところでマルハナバチを英語でいうとbumble beeだということは、なぜか知っている。ついでにいうとスズメバチがhornetであることも。いつも思うんだけど、こうしたヘンな知識って、どういうきっかけで覚え、どういうメカニズムで記憶に残っているのかね。英語の学習で習うような単語じゃないし、日常の中で使う言葉でもない。

ともあれ、bumble beeは知っていた。そこでリムスキー=コルサコフの曲の英名を調べてみる。なんかしらん、あれは(曲調からいっても)hornetではなくbumble beeくさいぞ、と思ったからだ。検索してみたらやはりそうだった。英名は「THE FLIGHT OF THE BUMBLE BEE」。いろんなところに出てくるからたぶん正解だろう。たとえば@Victor Entertainment 作品詳細 ペレス・プラード楽団 マンボの王様など。英語で検索してみることで確信を得ることができた。

結局、調べた範囲ではマルハナバチ=くまんばち回路は、ぼくの記憶の中とリムスキー=コルサコフの曲名だけでつながっている。やはり、この曲を知ってから「くまんばち」という言葉を覚えたのだろうか。
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いただいたコメント

鈴木雄介 さんによるコメント
ミトコンドリア500へーに続き、くまんばちで50へー。私もクマ(ン)バチ=マルハナバチと思い込んでました。で、、、「熊蜂の飛行」がリムスキー・コルサコフ作曲というのも知らんかった。曲も作曲家も良く知ってるのに、私の脳内では両者を関連づけられてなかった。そういやシェラザートのフレーズに「熊蜂」的なとこがあるな。ポットの日誌で知った「アイデアのつくりかた」って本をつらつらっと読んだ直後だったので、自分の脳がいかに錆びてるかを痛感。あー、、、もう酒飲んで寝よ。[2005.06.10  #185]

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