4 邪馬台国への私論
  [初出] 2004.11.16  [最終更新]  [平均面白度] 2.75  [投票数] 4  [コメント数] 0
前項。戸部在住さんからの指摘はもっともだし、かとさんの駄目出しもそのとおり。すんません。単なる思いつきで。

小学校5年か6年のとき、従兄(当時大学生)から宮崎康平の「まぼろしの邪馬台国」という本を貸してもらった。当時、ベストセラーだったんですね。夢中になって読みふけりました。今持っているのは後日、大人になってから古本屋で買い直したものだが、中を見ると小学生のガキがよく読めたなと思うが、それは大人の誤った感想というべきで、子どもは意外にこのような本はちゃんと読めるものなのだろう。子どもが苦手なのは「入り組んだ感情描写」であり、事実叙述中心で組み立てられているのは、かなり難しい言い回しや漢字が使用されていてもちゃんとついてくるものだ。

以来、青年期にいたるまで、邪馬台国関係の本は見つけるたびに読んだ。どれも非常に面白かった。というのも、こちらが突っ込めるからである。

多くの邪馬台国本はたった2千字そこそこの魏志倭人伝の記述をベースに、邪馬台国のあった場所を言い当てるという構造になっている。論争になっちゃうのは、魏志倭人伝の記述どおりに解釈すると、どうも現実にあわないということがあるからだ。

問題の中心は前回引いた「南至邪馬臺國 女王之所都 水行十日陸行一月」の部分。この場合の「起点」がどこかもまた議論があるのだが、それを北九州のどこか、あるいは九州から畿内に向かう地点のどこか(たとえば広島あたり)と考えようとも、南へ「船で10日、歩いてひとつき」なんて行くと、はるか南方海上に出てしまう。

そこで多くの邪馬台国議論では、魏志倭人伝が部分的に間違っていると考える。

九州説では、距離が間違っていると解く。たとえば「水行1日陸行1日」を書き写す際に間違えちゃったんだ、とか。

畿内説では方向が間違っている、と考える。「南至邪馬台国」ではなく「東至邪馬台国」なんだ、と。

おかしいのは、双方とも時として反対の意見に対して「資料を恣意的に読み替えるというのはいかがなものか」と苦言を呈すること。相手側からすれば「おまえに言われたくないよ」って感じだろう。

青年期のぼくは、こうした些か大人げない論争をオジサンたちが口角泡を飛ばして激論しているというバトルそのものを楽しんでいたわけだ。文字通り「生涯をかけて」戦っている人も数多くある。

たしかに邪馬台国がどこにあるかをはっきりさせることは、日本列島の歴史をどう見るかということに大きな関係がある。歴史像そのものが大きく左右すると言っても過言ではない。

卑弥呼が魏に朝貢したのは西暦239年だと倭人伝は言う。3世紀はじめだ。いっぽう5世紀には近畿を中心に巨大古墳が数多く築造され、このころには少なくとも西日本は大和朝廷あるいはその先行権力によって統一されていたと考えられる。つまり古代日本統一国家が成立しているわけだ。

邪馬台国を畿内だと見ると、西日本がざっくり統一されたのが3世紀の初めにまで遡ることになる。九州だと、それはもっと後のことと考えなきゃならない。

古代国家形成時期が200年ほど前後するわけだ。これはたしかに大きな問題だ。

また、魏志によると邪馬台国連合の参加国は30ほどだから、逆に考えると、畿内説だと近畿から北九州までの地域を30分割した程度の大きさがひとつの国の大きさになる。それだとひとつの国のサイズは今の県あるいは「国」(ほら美作とか丹波とかのそれ)と同じくらいになる。いっぽう九州説だと、当然のことながら個々の国のサイズはグンと小さくなる。

これも当時の人々の暮らしのありようを考える上での大きな要素であることは確かだ。

しかし、そうは言っても、たった2千文字ほどの文献だけからここはどこ、あそこはここというようなことを議論するのは、到底無理がある。資料の一部が間違っているというなら、全体が間違っているという見方も同時に成立してしまうわけで、議論は基本から雲散霧消してしまう。

邪馬台国がどこにあるという「解」は与えられた「方程式」からは決して解けないんだろうな。ある頃からぼくはそう思うようになった。そう考えるようになると、いつまでたっても「比定」を議論の中軸に据えているあまたの邪馬台国本がつまらなく見えてきた(不遜な言い方ですんまへん)。

熱がさめたんですね。

「邪馬台国がどこかはわからない。そもそも邪馬台国の存在すら疑わしい。でも卑弥呼は九州のどこかにいたんだろうね」

というのがぼくの勝手な結論だった。それは基本的には今も変わっていない。(本稿続く)
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