27 乱歩と大衆の20世紀展
  [初出] 2004.08.21  [最終更新]  [平均面白度] 4  [投票数] 6  [コメント数] 0
乱歩邸の土蔵、いわゆる「幻影城」が短期間であるが一般公開されている。池袋の江戸川乱歩邸があり、そこには2階建ての土蔵がある。それは書庫になっており、なんやしらん、怪しげな蔵書がいっぱいつまっておる、というようなことは知っていた。先日来、それが立教大学に譲渡されたということもテレビを見て知っていた。

その土蔵が公開されるという。東武百貨店の催事場で開かれる「江戸川乱歩と大衆の20世紀展」とセットで1000円。8月19日から24日まで(詳細はこちら)。書いた時点でもうすでに終わったも同然なんであるけど。

この展覧会および土蔵に、昨日、今日と2日連続で行ってきた。つまりは面白かったわけですね。乱歩は、その存在自体が非常に面白い人だ。これが太宰治とか木々高太郎だとか谷崎潤一郎の展覧会なら、この暑い中2日も連続で行きやしない。乱歩ならこその魅力に引かれて池袋詣でとなったわけだ。

素材そのものがきわめつけに興味深いから、それなりの価値はあったが、展覧会の出来としては、なんちゅうか、たいへん中途半端なものとなっている。

各地にある「なんとか文学館」というような施設での展示を思い浮かべていただきたい。その作家の年譜がパネルになり、初版本が展示され、自筆原稿や書簡のうちの数点がガラスケースの中に置かれ、愛用の品々がいくつかならぶ。ま、こういうのが今回の展覧会でも同様に展開されている。

それに加えて、当時の浅草の様子だとか、東京の人口増加だとか、といった周辺情報のパネルが数枚。なぜか、マネキンに縞の浴衣を着せたもの(D坂のトリックのあれだね)や、当時のモボの服装を再現しましたってのがある。別に遺愛のものというわけではない。A型フォードの本物も展示されている。ところどころにテレビモニタがあり、大正期とか昭和30年代のビデオクリップがエンドレスで流されている。少年探偵団のメンコやカルタも並んでおり、なぜか昭和30年頃の貸本屋を再現した作り物がある(ちゃんとした店になっているが、並ぶ本の多くは背表紙を並べたところを絵で描いたものというトホホな店だ)。若い頃の乱歩が暮らした部屋もセットで再現されている(ただ、乱雑なだけで、考証も甘いように感じた)。

そういうところでナントカ文学館より、工夫もされているし、なによりお金も使っている。でも、全体として、哀しいほど貧乏くさいのである。高校生にたっぷり予算をあげて、文化祭をさせたら、こういう展示になるだろうという感じだ。素材である乱歩自体のパワーで、その貧乏くささは隠されてしまう部分があるのだが、逆からいえば、それだからこそ、哀しくなる。素材そのものと見せ方の間の対比が、まるで冗談であるかのようだ。

そのうえ、土蔵の公開ってのが、またまたがっかりで、肝心の土蔵には50cmほどしか足を踏み入れられない。そこでガラス壁が貼られており、そこから先へは入れなくなる。つまり、のぞき込めるだけなのだ。考えてみれば、有象無象を勝手に土蔵の中に入れるわけにはいかない。盗難や汚損の心配があるからだ。それはわかるが、でも正直がっかりした。先に言ってよ、という感じ。

それでも昨日(金曜日)はよかった。ゆっくりと自由に見ることができたからだ。土曜日はまず立教の大教室に一時間くらい閉じこめられ、待たされたうえ、どんどん流れるように追い立てられた。おちおち見ることもままならない。ぼくは金曜日にゆっくり見たからいいが、土曜日に初めてみた人はイカったんじゃないかな。

土蔵修復に関するビデオ(待ち時間に上映される)を見ても、全体的に立教大学の宣伝臭が強いのだが、これは立教に対しては逆の効果しかなかったんじゃないかな。

素材そのものが極め付きに面白く、また、無限の展開の可能性を秘めているだけに、見せ方の工夫がチャチだったことに不満を感じた。全体としては行く価値はあるとは思うが。
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